数を数えるのが苦手なんですと言った。
1から100まで上手に数えられない。どこかでわからなくなったり、26の次が28になってしまったりしてしまう。
そしたらカウンターを使ったらどう?と言われた。どこからか先輩が探してきてくれた。
カウンターというものは、小さいのにずっしり銀色で重くて、カチという音は軽い。そしてカチとおせば1と記録される。9999まで数えると0に戻るものである。
「わーたのしい」カチカチおした。
小さいのに重くて、数しか数えられないなんて、可愛い。私これほしいです。と言った。
何を数えるの?
何数えたら楽しいですかね、と答えた。
先輩は少し考えたあと「街に出て、自分が好きだなあ!と思う人がいたらカチッとしたらいいよ」と言った。
私はその先輩のたまらない明るさが好きだ。自分では考えつかないような明るさがとても眩しくてハッとする。家に帰って、そのカウンターを見て私はきっと嬉しくなる。この世には割と、たくさん好きな人がいるとおもう。そう思わせてくれる。
詩や芸術に興味関心がない人がたまに口にする、すごく綺麗な言葉たちに、私がどうだ美しいだろうと思って連ねた言葉は全くもって太刀打ちできない。
そういう、人の心の根本を、もっと見せてほしい。こういう話をたくさんしたい。天気の話やオリンピックの話なんかよりも。
カウンターをカチッとしたら1と数が増えた。